やさしい航空技術ー空力設計
抗力全般
なお、形状抗力係数は有害抗力係数の大部分を占め、その他抗力は、エンジンの冷却空気や空調用空気の運動量損失によるものです。
飛行機の特徴を他の乗り物と比べてみます。もちろん空中を飛ぶことが最大の特徴で、単なる楽しみで空を飛ぶのもそれなりに効用があると思います。しかし、今日飛行機が世間に受け入れられているのは、輸送機関としての役割を立派に果たしているからです。
飛行機の性能を確保するには、抗力を減らすことが必須です。そのため、流線型をしています。ところで抗力を減らすには飛行速度を遅くすれば良いはずですが、揚力を確保できないので、ある程度速く飛ばざるを得ません。では、失速速度ぎりぎりの低速で飛べば抗力最小かというと、そうではありません。その辺のことも含め飛行機の抗力についての話をします。
有効揚抗比の比較を左上図に示します。遅くてもかまわない物量の輸送は船が格段に経済的であることが判ります。
飛行機は速さに価値を見出す場合に存在意義があります。ヘリコプターは有効揚抗比が極めて悪いので、輸送機関の主流にはならず、救急用など特殊用途に限られています。
さらに有害抗力係数は、形状抗力係数とその他抗力係数に分けられ、また、音速付近以上の飛行では造波抗力もあります。形状抗力係数は圧力抗力係数と摩擦抗力係数に分けられます。
Copyright (C) 2010 by Hidehiko Nishiwaki Professional Engineer AeroSpace
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輸送機関の経済的効率を見る尺度に有効揚抗比があります。
これは、
(揚抗比)x(推進効率)
で表されます。
ここで、揚抗比は揚力と抗力の比で、飛行機では揚力と言いますが、船は浮力、陸上の乗り物は地面反力に相当し、乗り物の全重量に等しい。
推進効率は、
(抗力)x(速度)/(推進装置の馬力)です。
ここで抗力は水平定常飛行中の推進装置の発生推力に等しい。
(抗力)x(速度)というのは、飛行機が周りの空気に対して単位時間に発生している仕事で、馬力を表しています。
また、零揚力抵抗係数(有害抗力係数)の内訳とマッハ数(圧縮性)の影響を左に示します。
音速付近での抵抗係数増加はおよそこの程度もあり、音の壁と言われた意味がわかると思います。
航空技術の発展の狙いは、昔は最大速度の追及が第1でしたが、現代の旅客輸送機においては、弛まざる推進効率と揚抗比の改善です。そして、さらに今では環境への配慮が加わります。
飛行機の設計では、「揚力の割りに抗力を少なく」が課題で、抗力について詳しく考えて見ます。
これらをまとめると、左のとおりです。
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抗力は気流の向きと同じ方向の力で、これを動圧と翼面積で割ったものを抗力係数と言います。抗力係数は有害抗力係数(零揚力抵抗係数ともいう)と誘導抗力係数に分けられます。