機首が上向けば下げる、下がれば上げる。という動きをあまり努力した操縦操作なしで、達成する。 これを縦の固有安定確保と言いますが、水平尾翼が大きな役割を担います。
飛行機を横から見たときの重心周りのモーメント(ピッチング・モーメント)を
     M(機首上向き正),
その係数を Cm=M/(qSc*)
      c*:平均空力翼弦(次に説明)
として、
 M,Cmに関する安定度を縦安定性と呼び、重心前方、水平尾翼大だと固有安定が十分確保できますが、操縦性との兼ね合いが重要です。

*飛行速度の安定度も縦安定性に含まれるが、ここでは省略

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やさしい航空技術ー空力設計

初期設計
外形形状
揚力
安定操縦
構造・装備との調和
抗力

ピッチング・モーメント係数の迎角に対する変化は、重心位置と水平尾翼容積比に関係します。安定な飛行機の重心が後退していくと、右下がりのグラフの傾斜はゆるくなり、ついには水平、さらに右上がりになります。また、水平尾翼容積比が小さくなっても同様になります。
グラフが水平になるときの重心位置を(安定)中立点(の重心位置)といいます。
中立点から前方に重心があるほど飛行機は安定度が強いことになります。

揚力係数は失速角以下の迎角増に対して常に増加しますが、ピッチング・モーメント係数は迎角増に対する変化が場合により異なり、安定度を左右します。
縦安定の条件は、
@ピッチング・モーメント係数の迎角に対する変化が右下がり
A迎角正にて同係数が零
B迎角零でのピッチング・モーメント係数が正であること、
ということができます。

水平尾翼
上反角・垂直尾翼

飛行機が固有の縦安定を有するか否かの目安は下図のとおりです。

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0.25C*


ここで、縦の安定・操縦性を検討するための用語を説明します。
c*:平均空力翼弦は左上図のように作図でその位置と寸法を求めます。
水平尾翼の効きの目安は水平尾翼容積比で見当が付き、左図中の式で表します。

飛行機は揚力を得て飛ぶだけではなく、姿勢の確保が重要です。機首上下、機首左右、横への傾き、あげくのはて背面でも自由自在の姿勢に操縦できます。これが飛ぶこと、操縦の楽しさでもあります。一方、一定の姿勢にパイロットがあまり努力することなく保つことも必要とされます。これらの飛行機の特性を称して、安定操縦性と呼びます。飛行機の安定操縦に関して形態設計上重要な、水平尾翼、上反角、垂直尾翼を取り上げて説明します。

h=x/c*  重心位置を示すパラメータ
Sh 水平尾翼面積
S 主翼面積
Vh=(Sh/S)(lh/c*)  水平尾翼容積比
普通の飛行機のVh の値は0.3〜0.8くらい

飛行機の平面形から安定中立点の位置を調べてみます。左図の式に示したように、この位置は主翼・尾翼の空力中心間の距離を各面積で反比例配分する位置、ということができます。
そして経験上、安定中立点より空力平均翼弦長の10%以上前に重心を設定する設計が、安定操縦性上良いとされています。

lh

1/2翼弦長線
初期設計
外形形状
揚力
安定操縦
構造・装備との調和
抗力

C*平均空力翼弦

上反角・垂直尾翼
水平尾翼

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安定よく飛ぶための重心位置と水平尾翼

C*平均空力翼弦

左翼の空力中心