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やさしい航空技術ー空力設計

初期設計
外形形状
揚力
安定操縦
構造・装備との調和

翼に気流があたり気流が下向きに曲げられる作用を受けるとき、その反作用として翼は気流の向きに直角方向の上向きの力を受けます。これは作用反作用の法則により理解できます。この上向きの力が揚力です。

気流が下向きに曲げられる作用を受けるのは、迎角が正、または迎角が0でもキャンバーが付いた状態です。翼は気流をなぜ下に押し曲げるのでしょうか。

気流が翼断面上下に沿って後縁まで流れ、翼後縁から離れた後もその向きを保つからです。これは実験観察からわかります。

揚力の説明に先立って、翼形状に関する用語を示します。
飛行機の翼は大体平板状であり、左右対称、気流方向(飛行方向)に直角方向の寸法(翼幅)は、気流方向の寸法(翼弦長)より、かなり大きい。
翼幅の2乗を翼面積で割った値(翼幅を翼弦長で割った値)を縦横比またはアスペクト比といいます。

胴体と主翼が重なる部分の面積も主翼面積に含めるのが普通です。

しかし、翼断面上下に沿って後縁まで流れない場合があります。迎角が大きい場合で、これを気流の剥離と言います。少しばかり剥離があっても揚力はでますが、剥離の範囲が拡がると揚力は激減します。これが失速です。失速寸前の迎角で翼は最大揚力を得ます。


Copyright (C) 2010 by Hidehiko Nishiwaki Professional Engineer AeroSpace Registed No.45904 . All Rights Reserved


揚力

風洞試験による揚力係数は、迎角に対する変化として表すのが普通です。そして、迎角に対する揚力係数の増え方(揚力傾斜という)と、その最大値(最大揚力係数)が重要な設計上の着目点です。

揚力傾斜には理論値が求められており1ラジアンあたり2π、1度あたりで示すと2x3.14/(180/3.14)≒0.11/度です。理論値の計算条件は、翼断面は平板状、翼幅は無限に大きい、気流に粘性が無いなどです。理論計算過程は省略します。

大雑把に揚力係数はどれだけかというと、迎角=10度で0.5〜1となります。最大揚力係数は上記例の場合キャンバーが無いので約1.2ですが翼断面のキャンバーを大きくするとかなり大きくなり、2くらいにもなります。
設計者・技術者はこういう数値を覚えておくと設計や技術課題の解決に便利です。揚力傾斜はアスペクト比が小さいと揚力傾斜は小さくなります。また、図示してませんが後退角が大きくても小さくなります。

気流方向に切った断面をみると、上面と下面の中点を結んだ中心線が上に反っていることが多い。反りのことをキャンバーとも言います。
翼断面前縁と後縁を結んだ線(基準線)と気流方向のつくる角度は迎角といい、翼断面下方から気流があたるとき正の迎角とします。
ここで揚力の発生理由を考えるとき、翼断面とそのまわりの気流を考えることにします。

*胴体を含む飛行機全体の迎角を考えるときは胴体の基準線(例えば胴体最下面の平面部)に対する角度にすることもあリます。

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飛行の原理、特に翼の揚力の発生理由については、私はもう決着のついた議論かと思っていたが、いまだにいろんな議論があるようです。あまり難しく考えない方が良いと思います。私は次のように考えています。参考にして下さい

初期設計
外形形状
揚力
安定操縦
構造・装備との調和
抗力

失速した翼断面周りの流れ

翼断面


抗力

揚力データ(NACA0012,A=∞)

翼断面まわりの流れ

主翼平面形

実機縮尺模型

送風機

揚力等測定部、天秤という

風洞

図はその一例で風洞試験で得られたものです。
風洞は一様な速度の気流を作り出す装置で、翼を飛行させるかわりに固定して気流をあて、翼にかかる力を測定します。

迎角が大きい場合に剥離が生じますが、翼断面形状も大きな影響を与えます。航空機設計には最大揚力係数を知ることが重要で、剥離の条件はこれに大きく影響します。そのために必要な実験データ、半実験理論は飛行機100年の歴史の中で十分確立されています。

揚力は、空気密度、飛行速度の2乗、翼面積に比例します。これも実験結果です。その比例定数が揚力係数です。式で書くと

揚力
=(1/2)・(密度)・(速度)・(翼面積)・(揚力係数)

この式になぜ(1/2)が付いているか。ある質量の物体がある速度で運動しているときの運動エネルギーは
   (1/2)・(質量)・(速度)    
であることはご存知でしょう。気流の場合は、質量のかわりに単位容積あたり質量つまり密度を使います。
   (1/2)・(密度)・(速度)2 
は単位容積あたりの流体の運動エネルギーを表します。次元は
   (力)・(長さ)/(容積)=( 力)/(長さ)
ですから、これは圧力を示します。この圧力は動圧と呼び、気流がせき止められたときの圧力上昇を示します。
密度、速度、翼面積の値は、それぞれ風洞試験で計測できます。揚力は風洞装置からこれにバランスする力を与えそれを計測します。これより、
 (揚力係数)=(揚力)/((動圧)・(翼面積))
 =(揚力)/((1/2)・(密度)・(速度)2 ・(翼面積))
が求まります。
揚力係数は、密度、速度、翼面積に無関係で、翼の形状、迎角に関係します。風洞試験の目的の一つはこの揚力係数を求めることにあります。実物より小さな翼を使った風洞試験による揚力係数でも、形状(相似形)、迎角が同じなら実物の揚力係数は同じという考えに基づいて、実物の密度、速度、翼面積を使って揚力が推定できるというわけです。

風洞試験で揚力係数が判れば、実機の揚力が求められることについて説明します。

風洞の大きさに限りがあるので、実機を相似形に縮尺、測定します。また風速も実機飛行速度より遅いのですが。適当な修正をして実機にかかる力を推定します。