操縦装置設計における空力設計者の役割は次の事項です。
●舵面の形状、大きさ、舵角、舵のヒンジモーメントなどを検討し決定すること。
舵面を動かす力として、小型機や低速機では人力方式、 高速機、大型機では油圧や電気を使う方式がありますが、どういう方式を使うかの判断のために重要です。
各種操縦系統の原理図を左に示します。これらの図は非常に簡略化しています。実際はこれらの派生型があり、極めて複雑です。操縦装置設計者の腕のみせどころであり、またこれらの装備品は大手航空機メーカではなく、航空機器メーカが製造します。
●フライトシミュレータによる安定操縦性改善。
操舵の情報は、パイロットの感覚が基本です。操舵感覚、操舵力と機体の動きとの関係はパイロットのみしか判らないのですが、それを理解し設計に反映することが空力設計者の役割でもあります。
飛行機開発ではそのための設計ツールとしてフライトシミュレータが使われます。
●油圧や電気で操舵する飛行機が増えた近年では、パイロットと舵面の間に、コンピュータが介在するようになっています。
そのため飛行制御理論を活用したコンピュータソフト設計が、操縦装置の空力設計の重要な仕事となっています。
操縦装置の基本構成は左図のとおりです。エルロン、エレベータ、ラダーの各舵の機能は下に示す飛行機の3つの軸周りの回転を制御します。
やさしい航空技術ー空力設計
さて、どちらのセスナを選びますか。
引込脚は第2次大戦より少し前ころから実用になり出しました。
現代の旅客機等では、引込脚はあたりまえの装備ですが、軽飛行機、低速機を設計する場合には、大いなる設計上の決断―引込脚か固定脚かーを要します。
低速機すなわち巡航速度およそ120ノット(時速220km/h)以下の飛行機では、引込脚は問題発生の懸念の方がその利点よりも大きい、と言えます。
・引込脚は、重く、複雑、脚出し忘れ着陸の危険を増す。
・引込箇所の翼または胴体の構造を複雑にし、空間を占拠する。
引込脚唯一の利点は抗力減少です。
・揚抗比が固定脚機よりも約20%良い。
・最良揚抗比は高速で起こる。同じ燃料での航続距離は20%長い。
搭載装備品との調和ー引込脚の例
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最大航続距離 (km) |
最良巡航速度 (km/h) |
最大速度 (km/h) |
価格 (一例) |
|
固定脚 |
1320 | 202 | 257 | 1968年型 464万円 |
引込脚 |
1945 | 224 | 289 | 1974年型 640万円 |
舵 | エルロン | エレベータ | ラダー |
同上 別称 |
補助翼 | 昇降舵 | 方向舵 |
制御軸 | x | y | z |
同上 別称 |
ロール | ピッチ | ヨー |
同上 説明 |
重心を通る前後軸 | 重心を通る左右軸 | 重心を通る上下軸 |
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操縦装置
セスナ・カージナルには引込脚と固定脚のバージョンがある。同じエンジン装備で較べると、次のとおりです。
軽飛行機など小型低速機では上記の舵面に加えタブやフラップが付く場合があります。高速機、大型機ではさらにスポイラーも付く場合があります。