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航空安全

このページでは、航空安全について筆者の思うところを書き綴ってゆきます。
その1: 筆者が航空安全に関心を持った動機。
2つ目は最近の航空事故例

3つ目は、忘れ去ることの出来ない航空事故いろいろ。

その1
  私は大学の専攻に航空工学を選びました。ならば、空を飛ぶこととはどんな感じか体験が必要と思い、簡単に空を飛ぶ方法としてグライダー部に入部しました。初飛行の快感とスリルは忘れられません。しかし、地上に降り立ち少し頭を冷やして考えると、本来臆病ものの自分がかなり危ないことをしているのではないかと、思うようになりましたが、やると決めた以上引っ込み付きません。
                                    
  こうなれば、冷静に客観的に自分のできる範囲では少なくとも安全を考えて乗るしかなかろう、という気になり気持ちを落ち着けたものです。航空安全の第一歩は自分が落ちないようにすることでした。それは、優秀なグライダーパイロットになることと考え、授業をよくサボり、グライダーに乗りに行ったものです。
                                   
  大学4年のときグライダー部で新グライダーを購入する機会に恵まれ、神奈川県藤沢飛行場から飛行機曳航で大阪八尾飛行場まで輸送することになりました。せっかくの機会だからこの空輸飛行に同乗できないかとクラブの部長先生にお伺いをたてたのですが、許可されませんでした。しかし、あきらめ切れません。空輸グライダーの機長は、グライダー製造メーカの設計者兼テストパイロットで、グライダー界ではその名を知らぬ人はない名パイロットです。その人にあっさりと「乗って行けよ」と言っていただき、名パイロットとともに約2時間の飛行機曳航によるグライダー操縦を体験しました。









この飛行では、まず伊豆半島を超えますが、近道のため比較的富士山に近いところを飛びます。高度は富士山頂上よりかなり低いです。ここで猛烈な乱気流に遭いました。前方曳航用飛行機はエルロンをバタバタ使って姿勢を修正しています。こちらグライダーも同様、エルロンを最大操作、スポイラーも開いて制御に奮闘、一時は曳航索がたるんで飛行機と並んで飛行する状況にもなりましたが、無事伊豆半島越えをしました。その後、伊勢湾上空では雨に遭遇、雲の下に出るため、降下飛行でした。飛行機曳航中のグライダー降下飛行では、グライダーは飛行機より抗力が小さいので、飛行機より前に出るとか、飛行機のお尻を吊り上げるような危険な状態になりかねません。このあたりは当然名パイロットが操縦カンを握っておられました。そして、大阪八尾まで行かずに、三重県明野飛行場に着陸しました。大阪まで行っておれば、同乗飛行がばれるところでした。

  乱気流やら雲の下に逃げる難しい操縦を名パイロットが何気なく敢行され、飛行安全の基礎と操縦の奥深さを思い知った経験でした。航空機はこういう使われ方をするのだ、こういうときに危ないのだということのほんの一部を見た思いでした。就職では、臆病ものの自分には向かないと思い、パイロットになろうとはあまり考えず、航空機設計の仕事につきました。この経験があるため、設計の仕事をしつつ飛行安全については常に気になる課題でした。