787-9の先進的抗力減少技術と787-8の設計改良
ボーイングは、胴体延長型787-9に抗力減少のためハイブリッド層流制御(HLFC)方式(簡単な説明、詳しい説明)を導入するらしい。大型民間旅客機におけるこの技術の適用は最初のことである。787-8と翼幅を同じまま、乗客数16%を増したうえで航続距離を伸ばすという設計計画のためである。胴体長は-8より20フィート長いだけの206フィートとなっている。
現状の設計のままでは揚抗比が計画を満足しないという。787-9の航続距離とペイロードの性能値を計画値に戻すために、積極的重量軽減プログラムが敢行され、5,000-10,000lbの軽減が確保された。これらは次のような一連の構造最適化により達成された。複雑さを避け軽量化した胴体フレーム、ハイブリッド床材、新しいシート・トラック、二次的支持構造の設計変更、翼に複合材リブ追加、そして燃料タンクベント(空気抜き)の役目を兼ねる新設計の翼ストリンガーなどである。また、さらなる性能改良は、ジェネラル・エレクトリックGenx-1Bおよびロールスロイス・トレント1000エンジンにおいても強力に進められている。
HLFCは、水平および垂直尾翼前縁に適用されて、積極的に境界層を吸い込む。 しかし、1991年に実施された757の大規模なHLFCと異なり、787のHLFCは、圧縮機を利用しない。代わりに、前縁小孔と外板直下構造空間部との部分的圧力差に基づいた受動的吸い込みシステム、が使われるだろう。
研究では、層流にすると燃料消費量は10-20%の減少できる可能性を示した。ボーイングは、初めての適用でしかも部分的であるから、1%かもっと少ない抗力低減しかあてにしていない。層流による抗力減少という利得に対して、製造と維持コストの増加が、どのような損得勘定になるかが、とりわけ未知なので、ボーイングは公式には787-9におけるHLFCの最大限の可能性に関して控えめな態度である。しかしながら、ボーイングは、787のエンジン・ナセルにも層流制御(LFC,Laminar Flow Control)が活用できそうという事実を得ている。これは簡単な境界層制御で、大型民間航空機へのLFCの最初の適用となる。
787-8 飛行試験機4号機 は飛行試験の真っ最中である。そこから得られたデータを活用して複合材外板標準厚さの更なる最適化が期待されるという。すなわち部位によっては外板を薄くして軽量化が計れる。
構造、システム、推進装置について飛行試験から学習された教訓は、これから1年かけて787-9の設計に反映され最終設計審査で設計を固め、製作にとりかかる。またこの教訓は、これから量産する787-8のどれかの号機にも反映できる。いつかの時点(号機)で少し焼き直した設計で-8に適用されるが、具体的方法は飛行機開発設計管理の腕の見せ所であろう。
また、電力についていうと、787-9ではより多くの電力需要のためその不足が心配され、補助動力装置と発電機の出力増大も考えられたが、787-8の試験から、現状の補助動力装置は-9用に適合した大きさであることが判った。消費電力の総合的な減少は、関連する電源システムの減少を促し、飛行機全体にわたりすばらしい波及効果がある、とのことである。
出典:Aviation Week & Space Technology/August 9,2010_p36-38