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川崎重工業は、XC-2輸送機を最小限改造した民間貨物輸送機(YCX)の製造と後方支援を、海外航空機メーカとで実施する合弁事業を検討中である。

                                
川崎はサブ組立設計、開発、システム調達、営業、市場開発を行う。パートナーとなる海外航空機メーカは、最終組立、製造飛行試験、および特別任務への適合を扱う。また両社は、運用中航空機の部品製造と機体の維持支援を行う。川崎はまだパートナーを指名していない。
                                         

                               
YCXは最大重量約140トン。同類他機であるエアバスA400Mとほぼ同じ。ボーイングC-17は離陸重量約265トン。イリューシンIl-76は210トン、アントノフAn-124は約400トンである。Il-76とAn-124は旧ソ連で開発された機体でかなり古く、その代替が期待されている。
政府、学識経験者、産業界代表による審議会を経て、日本航空機開発協会(JADC)の報告によると、この飛行機は今後20年間で200〜230機の市場になるだろう、という。

                                
その市場予測はロシアと他の前ソ連邦地域を除いている。これらの地域では、ロシア及びウクライナの航空機を買うと予想される。また中国も除いている。自前でジェット輸送機を開発していて、たとえそうでなくとも、日本製の航空機を決して買わないだろう。
米国、ヨーロッパ、中東に約50機の潜在需要があるというJADCの調査によると、半導体生産設備、電気ジェネレータ、掘削機、航空宇宙部品、競走馬を輸送するために、この飛行機に関心があることが明らかになった。

                                    
YCXは、XC-2からの設計変更をほとんど必要としない。XC-2は他の軍用機転用民間貨物機に較べより民間用に適合している。民間用エンジン(2基のGenera1 Electric CF6-80C2)を使用し、軟弱地盤滑走路用という不要な機能を省いた軽くて簡単な着陸装置を有するためである、と川崎は言う。

                                 
XC-2の設計データ所有権は防衛省にある。川崎によると、この状態での計画着手要件は認可を得ているとのことである。
防衛省は、産業基盤保持を支援し、単価を削減するために航空機の民間販売の考えを支持すると言っている。約300の会社がXC-2及び関連プロジェクトXP-1哨戒機に何らかの形で参入している。このことに関しては、「防衛省開発航空機の民間転用に関する検討会」の第1会会合が4月23日、北沢防衛大臣出席のもとで同省内で開催されており、同大臣は冒頭挨拶で前述の考えを述べている。この会合は今後、月1回程度開かれ8月に報告がまとめられる。

                                 
以上の出典   ・AVIATION WEEK & SPACE TECHNOLOGY JUNE14/21,2010_p79
           ・月刊航空ファンJULY2010
           ・飛翔 航空機産業公式ガイドブック 2008年7月


                                 
航空工業関係者悲願の国産航空機輸出は、三菱MRJもあるが川崎YCXでも実現可能であろう。民間用貨物輸送機は、旧ソ連機がいまだに活躍しているものの、いずれ退役する。上記市場調査で示されたようにかなりの機数が予想される。自動車の感覚からすれば極めて少ないけれど、単価は高い。大いに期待できるプロジェクトである。

                                 
XC-2は一見C-1と変わらない形態に見えるが、全備重量で3倍140トン、サイズで翼幅1.5倍44mと大きな飛行機である。性能では有償搭載重量C-1の8トンに対し38トンと格段の差、XC-2 の航続距離は12トン積んで8900km。速度はマッハ0.8と旅客機と同じである。C-1はマッハ0.7と旅客機並みの速度が出ないため、運航に制約があると聞いている。すなわちXC-2は格段に進化した飛行機である。

                                                             以上

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