ボーイング787のエンジン競争と厳しい燃費評価
GEの当面の活動の重点は次のようである。
・エンジン未選択の13の顧客からの受注。
・標準型 Trent 1000より燃料消費で優れているという、ボーイングの評価を維持すること。
・9月実施のPIP1(Performance Improved Package 性能向上パッケージ1)の燃料消費評価試験。
・現在初期地上試験中のPIP2性能向上型により、2012年後半には2%の性能進展。
参考資料
(1) Aviation Week & Space Technology/August 22, 2011 p35-36
(2) Improved Trent 1000 to fly on Boeing's 787, http://www.flightglobal.com/
参考資料(2)によるとPackage Aエンジンは2009年8月Derbyの地上運転設備で試験中、エンジン外部に部品が飛び出す破損事故を起こしている。その改善は当然実施されていると思われるが、詳細は明らかではない。
General Electric (GE)とRolls Royce (RR)2社ともに苦労している。
それにしても、エンジンの形態がこのように設計変更で次々と変わっていくと、運航に支障はないの
だろうか。
エンジンの開発は、GEといえども必ずしも順調ではない。目標推力達成の前に、やや低い推力で型式承認を得て運用が始まるが、エンジンメーカでは運用と平行して試験を繰り返し、より高い推力での型式承認を取得する。しかし、燃料消費率に関しては仕様書の1%内に収めねばならない。
日本航空が選んだGEnx-1Bの場合は次のようである。一口にGEnx-1Bと言ってもいろいろな形態があるわけである。
ボーイング787のエンジンは、General Electric (GE)とRolls Royce (RR)2社どちらかのエンジンを機体運航会社が選べるようになっている。
現在、下記2種のエンジンの燃料消費評価試験が、ボーイング787の飛行試験で行われている。
・ General Electric社 GEnx-1B性能向上型
・ Rolls Royce 社 Trent 1000 Package B 標準型
787受注機数の約60%がGeneral Electricを選定している。また787受注機数の約1/3、即ち約250機がエンジン未選定である。
その中でこれら2社は、エンジン未選定のまま機体発注したエアライン等から、70億ドル以上の受注を狙って、し烈な戦いをしている。
一方、RRはボーイング787の試験機ZA004にて燃料消費評価試験が終了したばかりのPackage B改良型で、巻き返しを図っている。
参考資料(1)によると、RRは、最初の4機のANA 787-8用として、この当座の形態で生産決定版Package Aエンジンを8月初旬に引き渡した。Package
Aエンジンは、主として国内線用に定格推力64,000lbで2月に型式承認された。
Package Bエンジンは9月初旬ころFAA Part33エンジン型式証明を得ると期待される。引き続き、11月初旬ころに787航空機修正型式証明を取得する。
Package Bエンジンは、ボーイング仕様書の1%内の燃費性能になるように設計され、11月下旬から12月前半に予定されるANA向け最初の長距離型787-8の納入用として、定格推力70,000lbである。
このエンジンは、LP(低圧)タービンの空気力学的改良、IP(中圧)タービン冷却流の改良、二次空気システムの変更とともに、ファン・ブレードとアウトレット・ガイドベーンのねじり変更という設計変更が盛り込まれている。
次期Trent 1000 の標準型Package Cエンジンの確定作業も進んでおり、性能向上をもくろみ10月には定格推力74,000lbでDerbyにて初回運転する。このエンジンは787-9の型式証明用となる。
完全に仕上がった最初のPackage Cエンジンは、2012年初頭に運転される。二次空気システムのかなりの範囲の変更とともに、高度なチップクリアランス制御システムが、高、中、低の各タービンに組み込まれる。
Rolls Royce Trent 1000の形態をまとめると、次のようになるのだろう。
参考資料(1)によると、最初の約10グループのGEエンジン付き787は、Block4標準GEnx-1Bを装備する。 日本航空へ11月下旬に引渡予定の初期
PIP1は、定格推力70,000lbである。
GEは、元来75,000lbで運用開始するようにPIP1承認を計画していた。しかし、制限最高排気温度より35度高温におけるブロックテストの最終サイクル中に、予期せず失速が発生し、HP(高圧)のタービン・ノズルの再設計を余儀なくされた。
設計変更ノズルは、今年後期にブロックテストに供試され、2012年2月の修正FAA Part33の一部として定格推力75,000lbで型式承認される。
PIP1はLPタービンの改良に焦点を合わせる。PIP2はタービンとともに、HP(高圧)とLP(低圧)コンプレッサーを性能向上させる。 PIP2は、胴体延長型787-9に要求される78,000lb推力レベルにて、仕様の1%内の燃料消費率を確保するよう設計され、2012年中頃にエンジン型式証明取得を目標としている。GEnx-1Bの形態をまとめると、次のようになるのだろう。